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第4回 糖尿病をより良く理解するために

Dr_photo 皆さん、こんにちは。東海大学医学部付属病院で糖尿病の診療をしています、鈴木大輔と申します。
今回皆様と一緒に、とても身近でありふれた病気である糖尿病について、4回のシリーズで考えてみたいと思います。

東海大学医学部 腎内分泌代謝内科 
診療科長 助教授 鈴木 大輔
   はじめに
  前回までに糖尿病の概念や検査、合併症についてお話しました。今回の最終回では治療法について考えてみましょう。
   教育
  糖尿病の治療と言うとすぐに思い浮かぶのが、食事と運動だと思います。けれどもそれと同じかそれ以上に大切なのが教育です。教育と言うと何か取り組み難い印象を持ちますが、簡単に言うと「糖尿病について正しい知識を身に付ける」ことです。どんなに一生懸命に食事や運動療法を行っても、間違った方法では効果が上がらないばかりか、逆効果になることさえあります。したがってしっかりした教育を受けることをお勧めします。一つの方法として、このようなコラムを参考にして頂いても構いませんし、市や町が主催する糖尿病の勉強会に参加することも良いと思います。また、糖尿病を専門に診療している医療施設では、短期間の糖尿病教育入院のシステムがありますので、そのような施設に入院することは食事療法も体験でき、とても良いことだと思います。
   食事療法
 

まず始めにお話したいのは、糖尿病の食事療法は決して食事制限ではないということです。実際に糖尿病患者さんで食べてはいけないものは何一つなく、むしろ1日30品目以上の食材をバランスよく食べることを勧めています。但し、食べ過ぎはいけません。一般的に適切なエネルギー摂取量は標準体重({自分の身長m}×{自分の身長m}×22)×身体活動量(25Cal ~35Cal)で求められます。たとえば160cmの主婦であれば、1.6×1.6×22=56Kgが標準体重であり、これに身体活動量の30Calを掛けた56Kg×30Cal=1680Calが適切なエネルギー摂取量です。そしてこのエネルギー量で計算された食事は身長が同じ160cmであれば、御主人が摂っても全く問題ないものです。
食事は一生摂り続けるものです。御自分の適切なエネルギー摂取量を主治医や管理栄養士さんに御相談下さい。

   運動療法
  運動すると血糖値は下がります。それは運動でカロリーを消費したことにもよりますが、運動によりインスリンの効きが良くなった(インスリン抵抗性が改善した)ことにもよります。また運動することの利点として、筋肉の萎縮を防ぐことも挙げられます。食事療法で体重が減ると、脂肪より先に筋肉が落ちてくる(萎縮)と言われていますが、この筋肉の萎縮を予防します。
運動の強度としては「きつい」と感じる運動では強すぎ、「楽である」、「ややきつい」程度の運動が目安です。また運動の頻度は出来れば毎日、1回20?30分行うことが望まれますが、継続することが大切であり、無理なく続けられる運動をお勧めします。例えば「バス停を1つ分歩く」「駐車場では出入口から一番奥に停車する」といった程度でも毎日続ければ効果がみられるでしょう。
但し、合併症の進んだ人や血糖のコントロールが極めて不良な人など、運動療法を制限した方がよい人もいますので、運動療法を始める際は必ず主治医に相談して下さい。
 
   薬物療法
  糖尿病の薬物療法は大きくわけて、飲み薬(経口血糖降下剤)とインスリンがあります。経口血糖降下剤は作用機序の違う5種類が発売されており、それぞれ特徴が異なります。お薬を服用しているようなら、御自分の薬がどのような作用の薬なのかは理解する必要があります。
インスリンも現在は作用機序が違うものが10数種類も発売されています。また注射器具や注射針なども十数年前と比べ、格段に進歩しました。インスリンに関しては以前から「インスリンは最終手段だ」、「インスリンを使ったら、自分のすい臓が駄目になる」などの迷信と誤解が数多くありますが、今は自分のすい臓を守るために早い時期からインスリンを使うこともあります。糖尿病治療の選択の一つとして、インスリンを考慮することは大切だと思います 。
 
   その他のコントロール目標
 

血糖値に関しては、以前にお話ししたようにHbA1c値で6.5%未満にコントロールすることが重要です。しかしながら、血糖のコントロールと同様に血圧と脂質のコントロールも重要です。なぜなら高血圧も高脂血症も動脈硬化の危険因子であり、すなわち狭心症、心筋梗塞、脳卒中の危険因子でもあるからです。
日本糖尿病学会の推奨する糖尿病患者さんの血圧と脂質の値は以下の通りです。

 
 ●血圧
    ・ 収縮期血圧:130mmHg未満
・ 拡張期血圧:80mmHg未満
 ●血清脂質
    ・ 総コレステロール:200mg/dl未満
・ LDLコレステロール: 120mg/dl未満
・ 中性脂肪:150mg/dl未満
・ HDLコレステロール:40mg/dl以上
 
   おわりに
 

第1回の本コラムでお話したように、残念ながら今の医療では糖尿病を完全に治すことは出来ません。ただし現代医療では血糖値や血圧、コレステロールを正常な人と同じようにコントロールすることが可能となりました。すなわち、治らない病気ではありますが、しっかりコントロールすることは可能であり、そうすれば合併症の発症を防ぐことはもちろん、糖尿病治療の最終目標である「健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持し、健康な人と変わらない寿命の確保」も可能です。
この目標を達成するために、本コラムが皆様方に少しでもお役に立つようなら光栄です。

 
     東海大学医学部 腎内分泌代謝内科 
診療科長 助教授 鈴木 大輔
Dr_photo
[略歴]  
1989年3月 東海大学医学部卒業
1991年4月 東海大学医学部大学院入学
1995年4月 東海大学医学部腎・代謝内科助手
  米国ミネソタ大学小児腎臓科へ留学
1997年3月 帰国
1999年4月 東海大学医学部腎・代謝内科講師
2003年4月 東海大学医学部腎・代謝内科助教授
  現在に至る
[受賞歴]  
1994年 日本内科学会奨励賞
1995年 Juvenile Diabetes Foundation International Post Fellowship Award
1995年 松前重義賞「学術部門」
2002年 日本糖尿病合併症学会賞
-Young Investigator Award
[資格]  
医学博士、内科認定医、糖尿病専門医、腎臓病専門医、糖尿病学会研修指導医、日本内科学会研修指導医、日本腎臓学会学術評議員、日本腎臓学会指導医
[所属学会]  
日本内科学会、日本腎臓学会、日本糖尿病学会、日本糖尿病性合併症学会、日本透析医学会、アメリカ腎臓学会、アメリカ糖尿病学会
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