これまで肺炎球菌ワクチンは、再接種により強い副作用が出現するとして接種は一生に1回のみとされていました。
しかし接種後5年を経過するとワクチンの効果が減弱すること、接種から4年以上経過すれば再接種時の副反応発現率は増加しないことなどが確認されたことより、平成21年10月18日より再接種が可能になりました。2回以上の接種が可能になることで接種開始年齢が低下し、肺炎球菌感染症発症率の改善が期待できるようになりました。
肺炎は日本人の死因の第4位を占める病気で、年間約10万人もの方が亡くなっています。インフルエンザに罹患した高齢者の1/4が肺炎を発症するとも言われています。その中で肺炎球菌性肺炎は65歳以上の高齢者において原因菌の一位を占める頻度の高い肺炎です。
肺炎球菌感染症は重症化しやすく、肺炎以外に髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、敗血症などの原因にもなります。近年では多くの抗生物質に耐性を有する多剤耐性肺炎球菌が増え(既に40%が耐性化しているとの報告があります。) 、治療困難な症例が増加しています。肺炎球菌ワクチンはこれらの多剤耐性肺炎球菌に対しても効果があります。
肺炎球菌ワクチンは高齢者の肺炎原因菌の中で最も頻度の高い肺炎球菌に対する予防効果を持つワクチンです。予防効果に加えて、肺炎にかかっても軽症ですむ、抗生物質が効きやすくなると言った効果もあります。注射による副反応(副作用)としては、注射部位のかゆみ、疼痛、発赤、腫脹、軽い発熱などがありますが重篤な副反応は極めて稀で、通常1〜3日で軽快します。インフルエンザワクチン接種による副反応と大差はありません。卵アレルギーのある方でも注射できます。
このワクチンは肺炎球菌による感染症のためのワクチンであり、それ以外の感染症には全く効果はありません。しかし肺炎球菌性肺炎は65歳以上の重症肺炎の50%程度を占め、特に高齢者では罹患すると致命的になることが多いため、接種をする重要性は非常に高いものと考えます。
肺炎球菌ワクチン接種を勧められる対象は、65歳以上の高齢者、慢性の心肺および肝腎疾患、糖尿病、脾臓摘出、HIV(AIDS)や白血病などの免疫不全などになります。前回接種でアレルギー反応のない限り、接種に関して絶対的禁忌はありません。
新型インフルエンザの大流行にて肺炎球菌ワクチンの接種を希望される方が非常に多く、現在どの病院でも品薄の状態です。
インフルエンザの流行は今後も続くと予想されています。接種をご希望される方は早めにご相談ください。 |